逃避のポスト

あけがた

新聞配達のおとがする


みんなの家にお届けするんだ
どんな記事が載っているか
どんな写真が載っているのか
みんなが首を長くしてまっている


犬が新聞をくわえて去っていく
ここの家はみんな新聞を見ないで捨てる
んだ  そして飼い犬の掛け布団になる
それを知っているから、犬は自分から
くわえてもっていくんだ


でも犬は賢いから、時々土管のある空き地へ
それを持っていって、仲間と読む
犬だって、お手やお座りだけしか出来ないわけじゃない。
きちんと人間社会の闇を知っている
そして犬同士で語るんだ


「犬は昔から、人間よりも賢く集団生活を行っていたんだ。 食べ物だって、分け与え合って、意地悪するものなんかいなかった」だとか、
「犬の記事がないのはまことに遺憾だ
犬のための、犬による政治がないと、
こうも世の中はぱっとしませんよ」
などと言いながら・・・
犬のボスは無力感に包まれてしまって、
それで勢いよく走ってどっかに消えて
ゆくんだ


夕方    郵便配達の人が慌てて手紙を
届けにいく


郵便配達の人は、きっと赤いポストから
一通だけ手紙を抜き忘れて、そのことが
ずっと気になっていて、どうしようもなくなって、もう一度ポストに戻るんだ
そうしたら、案の定一通だけ手紙が残っていた。
その手紙は、なんと自分宛の名前の手紙。びっくりして、もう一度見返してみると、住所が違っていたのでなんとなく腰抜けしてしまう。  
だけど立ち上がって、急いで届けに走って行くんだ


その様子を赤いポストのそばで見ていた小さな男の子がひとりつぶやく


「どうしてもう一度ポストから手紙を取り出す必要があるの?
ポストの中はね、真っ黒い洞穴みたいで、そこに入れられた手紙たちは、それぞれのおうちに届くように、
なんこも道が分かれているんだよ」


そうして、なんだか悲しくなって、
泣いて走って帰って、ママの膝で泣く
んだ。
ところが坊や宛てに、手紙が届いていた
んだ  
あの郵便配達員とおんなじ名前の、坊や宛てに。
手紙を開くと、そこにはこう書いてあった


「君にゆうびんです。赤いポストの中に
暗い道はありません。
郵便局で働く人が、ポストからみんなが投かんした手紙を取り出して、それを仕分けして、それぞれの住所に届けにいくのです。
ポストがそのようなシステムになって
いるのでしたら面白いかもしれませんが、それでは郵便屋さんの役割がなくなってしまうでしょう。」


坊やは自分の使命を突然感じたのか、
郵便配達員になろうと決心するんだ


と、そのような根拠もなにも無いことを
考えていると、インターフォンがなった


「あなたにゆうびんでーす。」


陽気な配達員が笑顔で渡してくれた
それは母親からの手紙だった
開くとそこにはこう書かれていた


ーげんきでやっていますか
   とうひばかりしていませんか
   自分の夢に向かってがんばって
   くださいね
   おうえんしています
   はっぴーばーすでい!ー


そうだった!きょうはぼくの誕生日
だったっけ・・(汗)